手技のかみだいら

施術日誌

50年来の股関節が!?

お悩み 膝痛、股関節痛

50年前の股関節脱臼から膝へ

60代の女性が来院しました。左の膝が痛むと仰います。
見ると左脚を極端に浮かせた歩き方で左脚が伸ばせていません。痛みが強くて脚を浮かせているのかと聞いてみると、そうではなく小学生の時に左股関節の脱臼をして以来、50年間もそんな歩き方で過ごしてきたと仰います。
そんなお身体なのに現在は立ち仕事で尚且つ重い物を持つ作業内容だそうです。
この方は股関節の事は既に諦めていて、とにかく膝が痛くなければ良いと仰います。

観察

左股関節は全ての方向に対して可動制限があり、特に伸展(真っすぐに立つ事)が出来ません。仰向けになっていても膝を浮かせないと股関節が耐えられない状態です。膝の裏とベッドの隙間はコブシ一つ入ります。
しかも小学生という成長期真っ只中の時の怪我を引きずり続けていた事で左足の骨の成長が右に追いついていない様子で細くて短い。筋肉も薄く弱々しい感じです。

詳しく調べてみると肝心の膝については、いわゆるニーインの状態でこちらはそれほど深刻な状況ではなく、比較的早期に痛みが取れるだろうと感じました。

考察

ご本人のお悩みは膝の痛みであり股関節は既に諦めているとは仰いますが、膝の痛みは大腿骨の角度を図の青矢印方向へ調整しただけでほとんど消えてしまいました。

多くの場合、この種の痛め方をするとスネの骨に歪みが出たり足の裏のアーチが崩れたりするのですが、特に目立つ歪みは見られません。
膝から下の問題が少なく膝から上の大腿骨だけで痛みが改善できたという事は、いかに股関節の影響を強く受けているかという事が分かって来ます。
そうであるならば、股関節の状態を少しでも改善して再発防止に繋げたいと考えました。

少々お節介ではありますが、ここは股関節の可動域確保の可能性を見ずにはいられません。

怪我の後遺症

後遺症には3つのタイプがあり、それ以来全く変化が見られないもの、少しずつ回復するもの、少しずつ悪化するものがあります。
特に関節の変形に関しては3番目の少しずつ悪化していくものが多数で、この方もこのケースのようです。

変形した関節の内部は確認する術が無いので動かす時の感触で慎重に見極めて「この方向にはもう少し動けるようになる。この方向はこれ以上動かすと危ない。」等と詳細に判定していく必要があります。

色々と調べてみた結果、この方の股関節は全方向に対して改善の余地があるという事が分かりました。50年という歳月の中でゆっくりと周りの筋肉や靭帯が固まり続け、変形という骨自体の問題に加え、結合組織の拘縮が加わってきた様子です。

こうなって来ると希望の光が見えてきます。周辺の固まった組織を解放してあげる事で可能性が広がる訳ですから。
とはいえ、骨の成長まで影響している事が分かっていますから限界もあるでしょうが…。

股関節の可能性を求めて

表層の触診可能な組織の拘縮を施術した後で深部の組織に柔軟性を付けるには通常のストレッチは危険があります。
無闇に伸ばし過ぎると新たな痛みを作ったり骨どうしの衝突に気付きにくいからです。これは皆さんも知っておくべき内容で、伸びないなら伸ばせばいいという方法はやめた方が良いでしょう。

このような場合は操体法、PNFストレッチなど苦痛を生まない方法が安全確実です。

一通り施術してみると、あお向けの時にベッドから膝までの隙間がコブシ一つ分空くほど曲がっていた足が指幅3本分まで修正出来ました。立ち姿も見違えるほど真っすぐ立っています。
ここまで来れば膝の痛みも簡単には再発しないでしょう。

諦めない心、大切にして行きたいですね。

後日談

1週間後に2度目の来院された時の会話です。
―前回受けた後、どんな感じでしたか?-
「膝も楽になったんだけど股関節の痛みが無くなったのはビックリしました。そのせいか仕事を終わると毎日体がクタクタに疲れてたのに全然疲れないんです。」
―〇さんの股関節との付き合いは長かったですもんね―
「痛みが無くなる事ってあるんだ!って思いました。」

そう話すと、涙を浮かべていらっしゃいました。

…50年ですもんね。それはそれは色々と辛い思いもして来たでしょうね。

―で、今日はどんな調子でしょうか?-
「あんまり調子がいいから畑仕事手伝ったんですけど、そうしたらまた膝が少し痛くなって来て(笑)」
―かしこまりました。では見て行きましょう。-

と、この日の施術をして行きました。
股関節の環境は上々の仕上がりになっています。とはいえ100%の改善は望めない骨格ですので「お仕事での使い方にもよりますが疲れが溜まって来ると、また不具合が起こるかも知れません。痛みや疲れ方が気になってきたらすぐにまた来てくださいね」とお伝えし、2回目の施術を終えました。

本当に良かったですね。
僕も会話の中の嬉し涙でこの仕事を続けてきて良かった、今後もますます精進しなくては。と改めて心に焼き付ける事が出来ました。ありがとうございます!

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