手技のかみだいら

施術日誌

左脚が痛くて立てなくなった

お悩み 腰痛、左股関節痛、左脚外側全体への痛み

70代の女性が「左脚が痛くて立てない」と来院しました。
入口から診察台までの距離6mを悶絶しながら入ってきます。
「わあぁ大変そうですねぇ」と声をかけると「もぅ痛くて痛くて…」と顔をしかめています。

この方は元々腎臓が良くなかったそうで、そこへ糖尿病を患わせて現在は週に3回人工透析をしていると仰います。
一回の透析に4時間かかるらしく、その間ずっと仰向けになっていなければならないので、それだけでも身体にとっては大きな負担です。

 

観察

4か月もの間、ほぼ歩けない生活をしてきたようで、両足の筋肉はすっかり萎えてしまい足先は冷えてカチカチに固まっています。
股関節の前側から外側にかけて非常に硬く伸ばせない事がまずは目につきます。

この辺りの筋肉が固まっている事で想像が出来るのは一日の中で座っている時間が圧倒的に長いだろうという事です。
普段足腰に問題を抱えていない方でも映画館や旅行の移動中などに長い時間座っていると立ち上がる時に足腰がギクシャクする事があると思いますが、そういった場合の「立ちにくさ」という現象の原因はこの辺りの筋肉になってきます。

念のためご本人に「座ってる時間は長いですか?」とお伺いしてみると「立つのが大変だし横になってても腰が痛くなるから一日中座ってる」と仰います。

この方の場合、毎日がそんな生活なのですから歩く事はもちろん立つことすら容易ではなくなったのでしょう。
更に糖尿病という病気は長期になると末梢神経の伝達を鈍らせ筋肉は痩せて柔軟性も無くなって来ますので、体質面でもリスクがあるためここまで酷い状況になったと考えられます。

座っている時間が長い方の場合、問題はこれだけではありません。
余程姿勢を気を付けていない限りは骨盤の傾きが後傾になってしまい腰の骨が後ろに曲がってきてしまいます。

左が姿勢を気を付けている方の座り方、右はそうでない方の座り方です。

この方もやはり腰の骨が後ろにずれて来ていました。
こういった習慣を続けていると立ち上がってからもこの姿勢が残り、歩き姿も特徴的になってしまいます。
その姿勢が定着してしまうと膝も曲がり始めて内臓も下垂し良い事がありません。

施術

透析を受けている身体で70歳を越えている事、痛みの強さや衰弱加減を考慮し安全第一で設計していきます。
腰椎も曲がってはいるのですが、ここは一旦股関節周辺の「座り疲れ」を取って行きます。

触ってみると画像の赤く塗った部分が非常に硬く、股関節の動きを完全に奪ってしまっているのが分かります。
経験上、4カ月間歩かなかったとしてもここまで酷く固まるだろうか…と思える程のレベルになっているのは、持病が影響しているのだろうと感じました。

筋肉の深い部分まで固まりが広がっているようなので、時間をかけて少しずつ動きを付けて行きます。
後の反動を考えて50%くらいの施術で初回のこの日は終わります。
「一日でも早く治りたい」というご本人の気持ちは良く分かるのですが、このようなケースでは急いではいけません。

術後の変化

初回の施術が終わると50%程しか施術していないのに痛みは消えた様子で、立って歩く事も出来るようになりました。
生まれたての小鹿のように不安定で力強さはありませんが、これからの歩行練習でどんどん力も戻って来るでしょう。

大丈夫。きっと元通りになりますからね。

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