施術日誌
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寝たきりの腰痛
メンテナンスで通院中の60代の女性から、「うちのお母さんを見て欲しいのだけど、どうしても動く事が出来ないので往診に来てもらえませんか?」と依頼を受けました。
普段は受け付けていないのですが、この日は何となく挑んでみたい気分になり伺う事にしました。
張り詰める緊張感の中
ご自宅に伺うとお母さんは介護ベッドに仰向けに寝ていました。年齢は90歳を越えています。背骨を複数個所圧迫骨折をしていて半寝たきりの生活をしているといいます。
骨粗しょう症は間違いなくあるでしょうから、細心の注意が必要です。寝返り一つ、くしゃみ一つでも骨が折れる危険があります。
さぁ…どうしましょうか。
どんなお加減か聞いてみると「少しでも動くと右腰に激痛が走る」と言いますが、もし骨折による痛みだとしたら僕に出来る事はありません。
全ての検査で痛みが出るなら骨折かそれに似た状態でしょう。
うつ伏せになってもらうのは不可能なので、あお向けのままで何とかしなければいけません。
検査と施術の候補としては※操体法と動体療法の2つが僕の頭に浮かびました。どちらの検査でも施術方法が見つからないなら振り出しに戻る事になります。
両膝を立てて膝を左右に動かしてみますが、どちらに動かしても同じように痛みが出ます。どちらか一方でも痛みの出ない状態なら操体法が使えたけれど、こちらは封印されてしまいます。
次に動体療法です。この方法は大島正樹先生が考案した術式で、ある場所に触れて動くと痛みが消えるという魔法のような施術法で、3回ほど触れて動く事を繰り返すと、触れていなくても痛まずに動く事が出来るようになります。
僕はこの施術法が大好きで、今でも応用法を研究している所です。
ココが怪しいなと思える場所が太ももの外側に見つかります。そこを触れたまま痛かった動作をしてみます。すると…「痛くない」といいます。成功です!と同時に骨折などの怪我ではない事が分かります。これは大きな収穫です。
他の動きに対しても痛みが消えるポイントを探しては打ち消し…を繰り返していきます。
一通り施術してみて、ゆっくり起き上がって頂きます。歩行器に掴まりながら歩いてもらうと、痛みも軽減しているようです。
まだ痛みはゼロではありませんが深追いはせずにこの日は終了します。体が弱っている時は回復も遅いので、刺激が効果的なものだったとしても体に浸透するまでに時間がかかる場合があり、その場で100%痛みを取るような事をすると歪みが逆転して新たな痛みを作る事があるのです。こんな時は50%取れていれば十分です。
嬉しいオマケ付き
後日、メンテナンスに来ている娘さんが施術を受けに来て、お母さんのその後を教えてくれました。
「多少は痛いけど我慢できない程の痛みは無くなった上に、便通がとても良くなったみたい。」と仰ってくれました。
便秘があるとは聞いていませんでしたが、痛みを消す場所が大腸に連動している事は分かっていたので「あぁ、そういう事もあるかも知れませんね。お通じが良くなれば数日後にもっと元気が出てくるでしょうね。」と、経過は良好のようです。
施術で身体の痛みが取れると嬉しいオマケが付いてくる事がよくあります。今回のように腰痛改善と便秘解消とか、膝を施術したら足が細くなった等様々ですが、この現象が起こると体調がどんどん良くなる事が多いので更に嬉しいオマケが付いてくるかもしれませんね。
10年ぶりくらいに出張施術をしましたが普段味わう事のない緊張感の中での施術は、とても良い勉強になりました。また機会があればお伺いしたいと思います。
注釈
※操体法とは左右の動作を比較して痛みのない方へ息を吐きながら動いてもらう事で痛かった方へ動きやすくなっていくという医師である橋本敬三先生が考案した方法です。